二兎を得る経済学
二兎を得る経済学―景気回復と財政再建 (講談社プラスアルファ新書)
- 作者: 神野直彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/08
- メディア: 新書
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神野先生の本。スウェーデンを参考に、教育や福祉施策の重要性を説く。
【各国比較】
○米国
・レーガノミクスにより米国は財政赤字を抱えたが、クリントンにより増税を組み込んだため、景気回復時に財政再建ができた。
・サプライサイドから減税すれば、景気回復時に社会不平等と消費税増税という政治コストが発生する。
○スウェーデン
・就業者教育の強化や女性労働力の上昇により景気回復を実現。IMFとOECDからの評価も高い。
・教育、環境、IT施策、育児を中心とした福祉施策の整備。
・地方政府の労働現物給付を中心とした行政サービス。
○独仏
マーストリヒト条約の制約下で財政赤字を減らすため、社会保障縮減や公務員リストラを行った。結果、財政赤字を抑えることはできたが、独仏ともに政権交代やストライキなどの政治コストを払った。
ちなみにフランスの公務員の就業者人口割合は約30%、日本は約4%。
【財政】
・財政は共同体の失敗から生まれたもので、市場の失敗から生まれたものではない。
・封建領主の世界では権力は領主が持っているが、民主国家になると社会、政治、経済という3つのサブシステムに取り変わる。
・公共事業の乗数効果は既に薄くなっているし、新たな産業創出にも寄与しない。
・赤字は地方に押し付けられた。地方は金融政策にもタッチできず、オープンシステムなので国のように住民の移動を縛ることもできない。このため、地方債へのフリーライドが起こる。米国では地方債を禁じる州も多い。
・日本は愚かにも、不況下で減収となる法人税や所得税の減税を行ってしまった。そして消費税増税を選択する。これでは政治コストが高くつく。
・消費税増税で財政再建は無理。方法は2つ、ハイパーインフレによる借金帳消しか、敗戦直後に実施された1回限りの財産税を課して国民資産を強制収用するか。いずれにろ政治・社会コストがかかりすぎる。
【債務管理型国家の提案】
・政府債務を凍結、国鉄清算事業団のように債務管理する。
・英国のコンソル債のように、国債を永久に償還しない。
感想
・全体的に賛意。ただ、スウェーデンがなんでこんな上手く行ってるのかなあ。
・債務管理型国家の提案は面白いと思う。